35歳プログラマ定年説とは、誰がいつ提唱したのか不明であるものの、IT業界ではまことしやかな噂として存在する「プログラマとして働けるのは35歳が限界である」という説です。
反論や反例もいくつか見られ、この説は現在の状況において一般的に当てはまるものではないとする意見が有力と考えられます。
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しかし、その反論・反例は定年説を覆すものの、どのような形であれプログラマとして35歳を迎えても働き続けられるか、ということへの回答は無いように思います。
今回は定年説に対する反論・反例をまとめた上で、エンジニアとしてこれから気をつけるべき点について考えてみたいと思います。
目次
35歳がエンジニアの定年であると言われる理由
多くの人材紹介サイトによる紹介文や、IT業界に身を置く方の Blog などで理由が述べられていますが、大きくまとめると次の 3 点です。
- IT業界は残業が多く業務内容が過酷であり、35歳を過ぎて低下した体力では追いつかない
- IT技術は目まぐるしく進歩するため学習するモチベーションが続かない
- 会社が社員に求める職務内容が35歳頃を境にマネジメント職に傾く
1つずつ簡単に説明をしていきます。
IT業界は残業が多く業務内容が過酷であり、35歳を過ぎて低下した体力では追いつかない
IT業界は新3K「きつい・帰れない・給料が安い」であると言われています。
※古くは土木業界の3K「きつい、危険、きたない」
35歳を過ぎると入用が増える一方で体力が低下して、このようなきつい現場に耐えられないだろうという指摘です。
「ITPソフトウェア開発白書」によると、ソフトウェア開発の8割程度は受託開発であるため、
納期に間に合わせるために無理をする機会が発生しやすいこともきつい要因の1つと考えられます。
IT技術は目まぐるしく進歩するため学習するモチベーションが続かない
かつてサーバ技術として最低限知っていて欲しいスキルセットに LAMP (Linux, Apache, MySQL, PHP) が有名となりましたが、Web サーバは nginx が使われる機会が増え、DB は MongoDB などの NoSQL が使われるようになり、開発言語は PHP 以外の言語として Ruby, Java, そしてフレームワークとしては Ruby on Rails、Spring が使われるようになり、これらを学習する必要があります。
このように、一度技術(ここでは LAMP とする)を覚えたから安心ということはなく、新しい技術を学ぶことが必要となる一方で、学習のモチベーションが続かないという指摘です。
会社が社員に求める職務内容が35歳頃を境にマネジメント職に傾く
35歳に近付くと会社からはマネジメント職に就くことが求められることがあります。
これは年功序列による昇給を行うものの、給与が多いポジションとしてエンジニアの枠がなく、マネジメント枠が増えてくることが理由だと考えられます。
人材派遣やSESをなりわいとする会社の場合は、年次が高く給与が高いエンジニアを抱えるよりも、若くてエンジニアを給与が低い代わりに数人用意する方が売りやすいといった事情もあるかと思います。
会社としては35歳を超えたエンジニアを求めていないという指摘です。
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定年説に対する反論・反例
ここまでで、定年説に対する根拠を述べてきましたが、反論・反例について触れていきます。
尚、会社の意向が35歳頃を境に変わる点については特に反論は述べません。これは会社の制度における指摘であり、個人で抗うために出来ることは、「頑張って会社制度を改善するために頑張り続ける」(マネジメント向きの発想だと個人的に思います)、「他の現場を移る」のが良いと思われるためです。
Fringe81社長日記 では「プロパー社員にマネジメント業務をしないようたてつけたところ、エンジニアを技術力でのみ評価できるようになった」例が紹介されているので制度改善に興味があれば参照して下さい。
さて、定年説に対する反論に話を戻します。
ざっくりと反論の要点を上げると「現在・将来のプログラマに対して定年説が通用するかどうか」となります。
つまり、ソフトウェア開発の業務形態の多くを占める受注開発において3Kを生み出す状況が続くかどうか、そして学習し続けることの負荷が高いのかどうかが要点となります。
最近のソフトウェア開発を取り巻く動向について簡単に紹介します。
IT業種の平均残業時間の減少と売り手市場化
まずIT業種の平均残業時間は減少を続けています。(※1)
この内容から「Sier、ソフト開発、システム運用」は 2012 年の 45 時間から 2016 年は 35 時間となっており、長時間労働がきついという状況は平均的に見て発生していないことが分かります。
また、近年は新規求人倍率が 2.0 を超えている売り手市場です。(※2)
平均的に長時間労働が発生していないということは、どこかの会社では長時間労働が発生している可能性もありますが、転職を含めて業種全体に目を向ければエンジニアとして35歳で定年を迎える状況ではないでしょう。
※1: マイナビニュース > 残業時間は3年前に比べ大幅減少
※2: 厚生労働省 > 一般職業紹介状況(平成30年3月分及び平成29年度分)について
OSSフレームワークによる学習コストの低下
フレームワークを使わずにシステムエンジニアリングの要素技術を 1 から学ぶのに対して、フレームワークは使い方を学ぶことでシステムエンジニアリングが行えるようになります。(当然、詳細な動作を理解するためには更なる学習は必要ですが)
このように、フレームワークが存在することで、常に学習し続けることが求められるエンジニアであっても、すべてのエンジニアが常に高い学習コストを払い続ける必要がなくなっています。
クラウド・WEBサービスの利用拡大
ガートナー ジャパン株式会社は 2000 年頃にフルスコープ型のアウトソーシングがブームとなったが、事業者も受注側も硬直化するリスクがあるため、妥当性を失うと予測しています。(※3)
クラウド・WEB サービスが浸透している現在、これまでフルスコープ型でアウトソーシングしていたシステムはクラウド・WEBサービスを利用する機会が増え、それに伴ってプログラマがシステム開発を行う負荷が減ることでしょう。
※3: Gartner > ガートナー、2016年以降の日本におけるソーシングとITサービスの展望を発表
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定年説は怖くなくなった、、、が、価値あるエンジニアとして生きていくためには?
定年説に対する反論により、3Kと呼ばれる状況は改善を迎えると予想でき、すべてのエンジニアにおいて高い学習コストが求められずに済む状況であると分かり、定年説は恐れる事ではないと少しは感じられたかと思います。
しかし一方で、エンジニアを取り巻くIT業界の動向は、平凡なエンジニアを必要としなくなっているとも捉えられます。
(簡単なシステム開発はクラウド・WEBサービスに取って代わり、フレームワークを使って開発出来る人は多い)
事実、経済産業省の「IT関連産業の給与等に関する実態調査結果」によると、有効求人倍率が高い現状でも採用する企業側としては満足するレベルの人材を中途・新卒共に採用できていないと回答しており、また技術レベルの高さを給与決定の際に重視するという回答が9割を占めています。そしてスキルの高さに応じて勉強に費やす時間が伸びています。(※4)
つまり、平凡なエンジニアは給与所得は低く、高いスキルに応じて給与所得が見込める環境があり、スキルを持つエンジニアである程、勉強時間は長くなっているという、頑張って勉強すれば報わる可能性があると言えます。
セミナーや勉強会等に参加することで、スキルを高めてみるのもよいでしょう。
※4: 経済産業省 > IT関連産業の給与等に関する実態調査結果(PDF)
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まとめ
35歳エンジニア定年説についてその原因と反論をまとめ、ソフトウェア開発にまつわる動向について調査を行いました。
結果、エンジニア定年説は恐れる必要が無いものの、エンジニアとして活躍するためには自らのスキルを高め続ける必要があると分かりました。(きっとこの記事に興味を持った方にはやる気の出る状況であると思われます)
定年説に抗ってエンジニアとして活躍をしたい人は、それが実現できる状況にあり、高いスキルを持つことが評価につながっている事実があるという事実が、定年説に不安を感じていた皆さんの少しでも役に立てば幸いです。
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最後に
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