変転の激しいIT業界の中でもsierは安定した仕事として根強い人気を誇りますが、sierとして働こうとしている人にとっては将来性がどうなのかという点は気になるところです。
sierが将来性なくなると言われているのは本当なのかどうかという点を、sierとして働く人が今後に備えて身につけておきたい自衛策とともに解説します。
sierは将来なくなる可能性あり
システムインテグレーターとも呼ばれるsierは官公庁や大手企業の情報システム構築を担当し、要件定義からシステム設計・開発・運用管理に至るまでを一括で請け負う仕事です。
顧客の課題解決に向けて要件定義や設計を行う上流工程から、仕様に基づいて開発・運用・保守管理を行う下流工程にかけて、多重請け構造で役割分担されているのがsier業界の特徴です。
インターネットの登場で激変したIT業界の中でもsierは1980年代以来の古い歴史を持ち、日本の行政や民間企業に深く根を下ろしています。sierの顧客には公的機関や金融機関・有名企業が多いだけに業界構造が堅牢で、就職先としても安定性の高い点が人気の一因でした。
そんなsierも今後ずっと同じ仕事が確保できるとは限らず、将来なくなるとも言われています。現在sierとして働いている人はもちろん、安定性を重視してsierへの就職を目指している人にとっても、将来仕事がなくなるとしたら大きな不安を抱えることになりかねません。
実際に「sier 将来性」というキーワードで検索してみれば、sierが将来なくなる可能性があることを示唆する情報が多く見つかります。それらの情報は完全なデマというわけではなく以下に挙げるような根拠もあることから、sierを目指している人は業界の現状を知っておく必要があります。
sierの将来性がやばいと言われる理由
sierの仕事が将来なくなる可能性があると言われる最大の理由は、インターネットの普及を背景に安価な月額料金で利用可能なPaaSやSaaS型サービスが登場した点にあります。オーダーメイドでシステムを開発してもらうsierから、クラウドを通じてサービスを利用するPaaSやSaaSへと移行しつつあるのが現状です。
sierは人月に頼るビジネスモデルとしての側面を持ち、ITゼネコンなどと揶揄された独特の業界構造を維持していくには下流工程に至るまで多くの人材を必要します。特有の多重請け構造が災いして若年層がsier業界を敬遠する傾向も見られるようになり、今後に予想される人材不足で業界が成り立たなくなる可能性が出てきているのです。
若者世代でsierが敬遠されるようになった一因として、下流工程に属する企業がブラック体質になりがちな点も挙げられます。多重請け構造の下流工程は主に独立系と呼ばれる中小規模のsier企業で働く社員が担当していますが、与えられた作業範囲だけの単調なコーディングが中心の仕事では将来性も期待できません。
要件定義など上流工程を担当する大手sier企業の社員は実際にコードを書くような仕事がほとんどなく、顧客との折衝以外は延々と資料作成に費やすような例が多いものです。そうした仕事を続けていてもITスキルが身につかず、下請け企業の社員とはまた違った意味で将来性に不安を抱えることになります。
将来sierが完全になくなるわけではない
このようにsierは業界構造そのものに問題があったため時代の変革に対応しきれず、将来が危ぶまれているのは事実です。とは言えsierの仕事そのものが完全になくなるというわけではなく、一定の需要は今後も継続されます。
行政のシステムにしても銀行の業務を支えているATMのシステムや交通機関の運行システムにしても、すべてがWebやクラウドベースに移行するとは考えにくいからです。
大規模なシステムほどPaaSやSaaSに置き換えるのが困難なため、将来もsierによる受託設計の形で安定的に維持されていく必要があります。
そうした理由からsierが完全になくなることはないとしても、民間企業を中心に業務システムのPaaSやSaaS化が進めば将来的な市場縮小が避けられません。
そうなればsier業界が必ずしも安定した仕事でなくなり、若手人材がますます確保できなくなります。人材不足に陥ってもsierが人員を多く必要とするビジネスモデルという点には変わりないため、業界で生き残るには仕事の受注構造を変えるしかありません。
sierとして働く人がするべきこと
sierとして働く人は以上のような点を念頭に置きながら、将来に備えて自衛策を身につける必要があります。現在sierとして働いている人は将来性に不安を抱えるsierに見切りをつけ、今後の成長が期待されるWebサービス系企業に転職するというのも1つの選択肢です。
とは言えsier業界で働いてきたスキルがWebサービス業界でそのまま通用するとは限りませんので、将来的な転職も視野に入れて今からITスキルを磨いておくことも大切です。
sierが年収を増やす手段には、フリーランスとして活動するという選択肢も考えられます。
フリーランス向けのエージェントで高単価のsier常駐案件が多く募集されているのは、社内の人材不足を解決する目的でフリーランスに仕事を外注する企業が増えている証拠です。
中小のsier企業で働いている人はITスキルを生かして週末などの空き時間に単発の仕事を受注し、収入を増やすという手もあります。
フリーランス向けエージェントの常駐案件よりは単価が低めですが、そうしたsierの副業には在宅で稼ぐことも可能なクラウドソーシングも選択肢の1つです。
まとめ
IT業界の中でも古い歴史を持つsierはクラウドサービスにシェアを奪われつつあるため、将来性には不安があります。システム受託開発には今後も需要が見込まれるだけにsierが完全になくなるわけではありませんが、フリーランスに外注することで時代の変化に対応しようとしている企業も少なくありません。
そうした中で現在sierとして働いている人はWeb系への転職やフリーランスとしての独立、副業などを通じて自衛策を講じる必要があります。