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質問と選択肢による回答でやりとりする選択肢型チャットボット
提示される複数の選択肢の中から最適と思うものをユーザーが選択することで成立するチャットボットを「選択型」と呼びます。
選択型チャットボットには多くのメリットがありますが、選択肢を用いることによるデメリットもあります。今回は、選択型型チャットボットの基本と特徴について紹介します。
目次
選択肢型チャットボットとは
選択肢型チャットボットとは、投げかけられる質問に対しユーザーが選択肢の中から回答を選択することで会話が進められるチャットボットです。
シナリオ型と呼ばれることもある選択肢型チャットボットは一般的にイメージされる会話とは異なり、常に質問とその回答という形でやりとりが進められます。ユーザーに求められる操作は提示される質問に対して選択肢からふさわしい選択肢を選ぶだけなので、チャットに不慣れな方でもスムーズにやりとりを進められます。
オペレーターとなるAIは予め用意された質問を回答に応じて提示するだけなので、内部で複雑な処理を行う必要がありません。人間とのやりとりをスムーズに実行するレベルのAIを稼働させるとなると高度な処理能力を要求されますが、選択肢型なら比較的処理能力が低くても実用レベルのチャットを実行可能です。
選択肢型チャットボットはファミコンなど家庭用ゲームで流行したテキストアドベンチャーゲームをイメージするととても似ています。パソコンで初期に発売されたテキストアドベンチャーゲームでは直接キーボードで英単語を入力して行動や発言を指定していましたが、家庭用ゲーム機はパソコンほど性能が高くなかったためあらかじめ用意された選択肢の中からコマンドを選ぶ形式が採用されました。選択肢型チャットボットのあらかじめ用意されている選択肢の中から最適なものを選んで回答する、という操作はアドベンチャーゲームのコマンド選択と似ており、選択によって枝分かれしていくという点も共通しています。
選択肢型チャットボットのメリット
・シンプルな操作でだれでも簡単に扱える
選択肢型チャットボットでユーザーに求められるのは提示された選択肢の中からひとつを選んで決定するという簡単な操作のみです。パソコンはスマホのチャットに不慣れな人でも簡単に操作できるので、誤入力や操作ミスによるエラー発生率は大きく下がります。
・フローチャート形式であらゆるケースを想定して対処できる
選択肢を選んで会話が進行する選択肢型チャットボットでは、あらかじめ作成したフローチャートに従ってやりとりが進みます。選択肢によって枝分かれしていく内容は全てひとつのフローチャートで管理されるので、想定される内容の数だけ選択肢を用意しておけばあらゆるケースに対応することができます。
一番最初にすべての回答を想定して選択肢を用意していくのは大変な作業ですが、完成させてしまえばトラブルが起きる可能性は低く保守コストは抑えられます。選択肢を追加すれば分岐はいくらでも増やせるので、チャットの対応範囲を拡大するような改良も低コストで実現します。
・構造がシンプルでコンピューターの対応が容易
選ばれた選択肢によって条件が決定されそれに応じて反応する、という選択肢型チャットボットのやりとりの様子はコンピューターを制御するプログラムの構造ととても良く似ています。あらゆることに条件を設定しておき選択肢によって分岐していく、という作業はコンピューターにとってプログラム処理で馴染み深いものなので容易に対応可能です。
選択肢の数が増えても条件付けとなる選択肢の設定さえきちんとしておけばエラーが起きる確率は低く、最終回答となる目的地に向かって間違えることなく案内を進められます。
ユーザーからすると選択肢を選んで人間と会話しているかのような自然なやりとりが行われますが、実際の処理としてはあらかじめ設定された応答を返しているだけなので高度な性能を必要としません。応答は全てあらかじめ用意された定型文なので、コンピューターの処理している内容は非常にシンプルな作業のみです。
・相談内容が明確になる
チャットボットを利用して問い合わせしてくるユーザーの中には抱えている不満や疑問を上手く言語化できてないケースが少なくありません。直面しているトラブルや不具合が言語化されていないと対応するオペレーターに相談内容を上手く伝えることができず、問題解決方法がわかるまでに長い時間と労力がかかってしまいます。
選択肢型チャットボットではあらかじめ用意された選択肢に回答していく形でやりとりが進められるので、悩みを上手く言語化できていなくても最もふさわしい選択肢を選んでいけば求めている解決方法に近づくことができます。相談内容がよくあるトラブルのパターンにあてはまっていれば、提示される選択肢は求める相談内容に近しいものとなるので間違えること無く目的までたどりつけます。
・AIの認識制度が向上する
ユーザーが質問や相談を直接文字で入力する完全入力型チャットボットでは相談内容の認識精度が大きな課題となります。
例えば、電源スイッチを入れてもパソコンが起動しないという悩みを相談する場合でも人によって入力する文章はバラバラです。「スイッチを押したのにパソコンがつかない」「電源を入れたのに立ち上がらない」「主電源は反応しているがOSの起動画面が表示されない」この3つはどれも同じ現象について問い合わせている文章ですが、見ての通り書かれている文章はバラバラです。人の書く文章は同じ内容、同じ目的でも表現や単語選びによって全く異なるものになります。完全入力型チャットボットのAIにはこれらの文章を間違えること無く理解できるだけの認識精度が要求されます。
選択肢型チャットボットでは常にAI側からの質問に対して選択肢による回答という形でやりとりが進められるので、文章の認識精度を問われる場面はありません。表現の違いなどユーザーごとの差異によって認識精度が揺らぐことがないので誰が操作しても正しく認識し、選択肢を通じてユーザーが求める内容へと導きます。
選択肢型チャットボットのメリット
・応答はあらかじめ用意された定型的な反応のみ
選択肢型チャットボットではあらかじめ用意された定型的な対応のみでやりとりが進められます。選ばれた選択肢に対して柔軟に変化するというようなことはなく、あくまでも事前に設定された反応を機会的に返しているだけなのでユーザーには無機質で機会的な印象を与えてしまいます。
人間のオペレーターとやりとりしているかのような自然な会話は選択肢型チャットボットには不可能です。事前にあらゆるパターンを想定していても選択肢が同じであれば返答も同じなので、コンピューター特有の融通の効かなさが強くでてしまいます。人によっては繰り返される定型的な応答に冷たさや距離感を感じてしまいます。
・想定外の問い合わせには対応できない
選択肢型チャットボットはオペレーターからの問に対して選択肢で回答する形でやりとりが進められます。質問内容は事前に設定されているのでユーザーに応じて柔軟に質問が変化するようなことはありません。選択肢に関しても事前に用意されたものの中から選ぶだけなので、開発者が考えていなかった想定外の質問には対応できません。
パスワードの再発行方法や営業時間など問い合わせ内容と回答が確定しているような相談に対して選択肢型チャットボットは強みを発揮しますが、個別のケースで状況が異なるような相談内容には不向きです。事前に想定されるケースにはたどり着きますが、フローチャートに組み込まれていないケースには対応できません。
ある程度質問内容がパターン化されているカスタマーサービスには向いていますが、機械の故障原因の特定など個別に状況が異なるような相談内容は選択肢型チャットボットでは取り扱い不可能です。
・規模が大きくなるほどフローチャート作成の負担が大きくなる
選択肢型チャットボットでは想定されるやりとりを選択肢の分岐を利用したフローチャートで管理します。フローチャートは選択肢型チャットボットの本体であり、AIは回答に応じて枝分かれする分岐を管理している似すぎません。フローチャートの充実こそが選択肢型チャットボットの品質向上に繋がります。
選択肢型チャットボットの対応半期が広がり規模が大きくなるほど必要なフローチャートも大型化します。あらゆる相談に対応する選択肢型チャットボットを作り上げるにはあらゆる相談を想定して選択肢を用意しフローチャートを完成させる必要がありますが、規模が大きくなるほど作業量は膨大なものになります。
フローチャートそのものはシンプルな構造ですが、複数の選択肢を間違いなく管理するのは大変な作業です。アップデートで選択肢を追加すれば分岐はさらに複雑化し、フローチャートの管理負担は重くのしかかります。
・ユーザーの不満をうまくすくい上げられない
選択肢型チャットボットを利用するユーザーは相談や要望を選択肢を通じてしか提示できません。最大公約数的な意見集約にはなりますが、個別のユーザーが抱く不満は選択肢というふるいにかけられてしまうため上手く救い上げることができません。
例えば「暑い」「寒い」「ちょうどいい」という3つの選択肢しか用意されていなければ「暑いけど快適」「寒すぎて我慢ができない」「やや暑いので少しだけ温度を下げてほしい」という繊細なユーザーの意見は切り捨てられてしまいます。
選択肢の絞り込みは重要な作業ですが、加減を誤るとユーザーの不満に対応できない役立たずのチャットボットが完成してしまいます。選択肢を増やすとかえって最適な対応から遠ざかってしまうケースもあり、使いやすく有用な選択肢型チャットボットをつくり上げるのは簡単ではありません。
選択肢型チャットボットを活用する
選択肢型チャットボットはあらかじめ問い合わせ内容がある程度パターン化されているような現場に向いています。
ECショップやWEBコマースの問い合わせページには「よくある質問」が掲載されていますが、あのページをそのまま選択肢型チャットボット化すれば実用的なチャットサービスが低コストで完成します。
反対に質問内容が多岐にわたり複雑化しやすい現場には不向きです。システム系のヘルプデスクやビジネスサービスの問い合わせ対応などは個別のケースごとに異なる対応が求められるので、パターン化に強みを発揮する先端くし型チャットボットでは対応しきれません。
選択肢型チャットボットを活用するには求められる対応や用途にふさわしいかどうかを検討する必要があります。実装を間違えると全く使いものにならないので注意してください。
「質問と選択肢による回答でやりとりする選択肢型チャットボット」のまとめ
選択肢型チャットボットはカスタマーサービスなどで有効に機能する技術です。オペレータの人的コストを削減するだけでなく正確な案内もできるので顧客対応の質的向上も期待できます。選択肢型チャットボットの特性を理解した上でただしく活用してください。
参考URL
https://www.chatdealer.jp/yomimono/chatbot_difference.php
https://saichat.jp/saichat/scenario/
https://markezine.jp/article/detail/26586