企業のWebお問い合わせ対応などには自動で対応してくれる「チャットボット」を導入している中小企業などもあり、事業の円滑化や人件費の削減といったさまざまな効果があります。 ただ、チャットボットの普及はそれほど広まっているも […]
チャットボットの世界を牽引してきたEliza型を徹底解説
近年、急速に流行りビジネスシーンでも利用されるようになったチャットボットですが、その起源を知っていますか?
チャットボットを導入するにあたって、基本的な知識を得ておく事は無駄になりません。
今回は元祖チャットボットとも言えるElizaとその系列であるEliza型チャットボットについて解説していきます。
ELIZAの前に、チャットボットとはどんなもの?
まず、Eliza型のチャットボットを語るうえでチャットボットがどういうものかを先に解説していきます。
チャットボットはチャット+ボット(ロボット)という意味で、いわゆるメッセージをやりとりするチャットによってコンピューターと対話しているかのように見えるプログラムの事を指します。
現在運用されているチャットボットの多くはテキストを入力すると、それに対してメッセージを返してくれるような形になっています。
ただ、音声入力によるものも増えてきていて、今後も進化していく事は間違いありません。
チャットボットは、まだまだ完璧な応答ができているわけではないものの、状況を限定することで実用レベルにまで達し始めています。
具体的にはWEBサービスのカスタマーサポート等にチャットボットが設置され運用されています。
これによりユーザーは24時間いつでもチャットによりサポートを受けられるようになっているわけです。
この他にも多くの企業がチャットボットを導入しはじめており、ビジネスにおいて無視できない存在になりつつあります。
チャットボットとチャットを行うアプリケーションは多岐にわたります。
カスタマーサポートなどはWEBページに埋め込まれる形になっている事が多いですが、それ以外のチャットボットではLINEなどを介して利用されるものなどもあります。
極端な事を言ってしまえば、文字や音声を入力さえできれば、そのデータをチャットボットのシステムに送り込んで解析できますから、私達が使えるデバイスのほとんどで利用できるでしょう。
要するにチャットに対してコンピューターが人間のように反応してくれるシステムなわけですが、チャットボットはいくつかのタイプに分類することができます。
選択肢型、辞書型、ログ型、そしてEliza型です。
Eliza型と名前がついているのは、最初に誕生したチャットボットがElizaという名前だったためです。
同様のアプローチで作成させているチャットボットをEliza型と呼ぶようになったのです。
Eliza型と名前が付けられてしまう程にチャットボットの歴史においてElizaは重要な存在となっています。
次の章ではEliza型チャットボットの歴史について触れていきます。
Elizaとチャットボットの歴史
さて、Elizaという名のチャットボットですが、誕生したのはなんと1966年です。
パソコンが一般に普及しだしたのがWindows95のあたりだとすれば、そこから約30年も遡る事になります。
実際に完成したのは1966年ですが、プログラムの開発は94年からしていたようです。
Elizaを作ったのはMITのジョセフ・ワイゼンバウムという人物です。
このElizaは後の人工無脳系と呼ばれるチャットボットの起源であると言えますし、もっと広くチャットボット全ての起源であると言っても過言ではありません。
Elizaが誕生した直後には、その応答がまるで人間のように見えたという事例がいくつもあり非常に可能性を感じるものでした。
もちろん、Eliza誕生当時と今の技術を比較すればまだまだと言えますし、入力した内容によっては残念な結果になる事もありました。
あくまでも、運良く想定された入力をした場合に、それらしい応答をする事もあったという程度のものです。
ただ、それらしい応答を連続して何度か繰り返せば、利用した人が素晴らしいプログラムだと感動した姿は容易に想像できます。
そして1972年にはPARRYというチャットボットが誕生します。
そのプログラムは基本的にElizaと同じなのですが、聞き役としての反応をするElizaに対してPARRYは積極的に会話をしていくように作られました。
ちょっとした違いではあるものの、プログラムが自分に意見や信念といったものを持っているように見え、一歩前進したと言えるでしょう。
PARRY誕生からしばらく、1988年になるとJABBERWACKYが誕生します。
これはEliza型ではなく、対話によって学習していくことによって、自然な応答を自分で作成していくプログラムです。
誕生直後の精度はあまり高くなかったため、急な話題の変更についていけない事も多々ありました。
人が会話を常に流れに沿って行うとは限りませんから、このあたりは弱点と言えます。
しかし、その後も改良が続けられ徐々に会話の精度があがり、非常に人間に近い会話ができるようになっていきます。
次は1995年にA.L.I.C.E.が誕生します。
これはElizaと同様のタイプで、オープンソースとして公開されたことにより会話のルールが増えて、非常に多くのパターンに対応できるようになりました。
完全にElizaの上位互換といったところでしょうか。
その後のプログラムにも多くの影響を与えています。
それから少し、大きく変化が訪れたのは1997年頃です。
この時にはパソコンもインターネットもかなり一般的に利用されるようになってきました。
Microsoft Office 97にはチャットボットを利用したキャラクターがヘルプ要因として導入されました。
officeアシスタントと呼ばれるもので、イルカの見た目をしたマスコットキャラクターです。
仕組みは辞書型を採用しており、Eliza型ではありませんが、一般にも広く知られるチャットボットが誕生したと言えるでしょう。
そして2016年頃にはどんどんチャットボットの進化が加速していき、チャットボット元年と呼ばれるまでになりました。
この裏ではディープラーニングの提唱とその利用により、AI技術が一気に進歩した事が関わってきます。
Eliza型チャットボットの仕組み
この章ではEliza型チャットボットの仕組みについて解説していきます。
Elizaはパターンマッチング技法というものを使ったプログラムです。
これは入力されたメッセージからキーワードを拾い上げ、キーワードごとに決まった返事をするという極めて簡単な仕組みです。
「aという入力に対してAと返事する」といったパターンをキーワードごとに設定してあり、これが沢山用意できれば会話が成立しているように見えるという発想です。
また、1キーワードごとに応答するパターンを複数個ずつ用意していくことで、返事の中身がワンパターンにならないように工夫されています。
弱点としてはキーワードとその応答を事前に用意しておく必要があるため、用意していないキーワードに対してはきちんと応答できないという事があげられます。
これに対応するために、キーワードがデータベースにない場合には、当たり障りのない応答をして会話の続きを促すような返しを定型文として用意しています。
定型文によって更に会話を続けさせ、キーワードを引き出そうという考えです。
ただ、これはキーワードがデータベースになければ一律同じ返事を返すという事になります。
この定型文自体にもパターンを用意していたとしても、たとえばデタラメにキーボードを叩いたような文字列でも「文章を入力されたがキーワードが見つからなかった」という判断をしてしまい、用意された定型文を返してしまうわけです。
多言語で文章を書かれた場合も同じような反応になってしまいます。
また、この仕組みでは会話のパターンを事前に大量に用意していなければ自然な会話というのは非常に難しいです。
Elizaは応答のルールを200種類程度備えていましたが、これだけでは十分とは言えませんでした。
使用する環境を制限して、特定のジャンルの会話にのみ絞ったとしても不自然な部分は出てきてしまいます。
Eliza型のチャットボットであるA.L.I.C.E.はオープンソースで公開されたため、非常に多くのルールを備える事に成功しました。
なんとその数は40,000にもなり、Elizaと比較すると200倍にもなります。
これだけあれば非常に多くの会話に対応する事が可能となります。
しかし、それでも現在のディープラーニングを用いて学習していくチャットボットは十分なデータがあれば非常に優勝で、比較すると性能で劣ってしまうと言わざるを得ません。
パターンマッチング技法はパターン数さえ増やせば自然な会話が成立する一方で、人の手による準備は限界があるという事です。
Elizaの影響
Elizaはチャットボットの世界にとても大きな影響を残しています。
Elizaの登場により今のチャットボットがあると言っても過言ではありません。
現在ビジネスで利用されているチャットボットもElizaがあったから存在しているのです。
また、Elizaの影響はチャットボットだけではなく、映画やアニメなどにも影響を与えており、Elizaを元ネタとしたプログラムが登場したり、登場人物の名前に起用されたという例もあります。
また、ゲームにおいても設計にElizaの影響を受けたものが存在し、それだけElizaが与えた影響は大きかったと言えるでしょう。
例えば現在では一般的に知られているSiriもチャットボットの一種と捉えられますが、長い話などを要求すると小話としてElizaの話が出てくるなど、こうした部分からもElizaの影響がいかにあったのかが読み取れます。
日本においては人工知能の対となる形で人工無脳と呼ばれ発展していきました。
基本的にEliza型のパターンマッチング技法を用いているものの、日本語では単語を拾い上げる事が困難なため独自の進化をしたと言えます。
また、人工無脳にはそれぞれキャラクター性がもたされている事が多く、日本のアニメ文化との相性の良さもあったのではないでしょうか。
■まとめ
チャットボットを語るうえでEliza型は外すことができません。
多くのチャットボットの起源となったのがElizaだからです。
流行に乗ってチャットボットの導入を検討している企業も多いことだと思いますが、導入のまえにチャットボットがどのようなものか知っておくことも大切です。
参考:https://ja.wikipedia.org/wiki/ELIZA
https://mobilus.co.jp/agent/blog/496/